野点
小津神社花絵巻「紫式部の巻」

花もやはり紫なんですね。
紫式部と言えば、もちろんかの有名な『源氏物語』の作者さんです。
千年紀だということでさかんに話題になっており、ネット上にも「源氏物語千年紀委員会」の公式HPが開設されているほどです。登場人物相関図や物語の舞台やゆかりの地巡りの紹介があったり、関連イベントもたくさん。女性登場人物の人気投票なぞもあり、迷わず浮舟さんに一票。選挙じゃこうはいかんもんねー、とにんまりしてしまいました。
5月末にも京都下鴨神社で十二単が復元新調されたと、鮮やかなかさねの色目の写真をまだご記憶にとどめておられる方もいるのではないでしょうか。
十二単とまではいかなくとも、神官の身につけている狩衣(かりぎぬ)は、平安貴族の装束でもありました。祭事の折など、じっくりご覧になってみるのも一興かと思います。
ここまで盛り上がっているならば、せっかくなので源氏物語の世界に便乗してみましょう。
あくまでいち読者としてつまみ食い程度のものでも、楽しめればこっちのものです。
木洩れ日の参道

見るからに威風堂々とした楠と椋の御神木だけでなく、サイカチ、一位樫、杉など高くそびえ、天でも地面でも、光と影をきらめかせてくれています。夏の盛りには、ご参拝の方がよく、おや? ここは涼しい、といった顔で振り仰いでおられる。
この樹木たちに会いにいらっしゃる方も多くあります。
参道に木洩れ日はゆらゆらと揺れ、境内に吹きわたる風と葉ずれの音。ブログでお届けできないのが残念です。
さて、今宵は半月を伽に一献、とまいりましょうか。
(三貴子/記)
水無月の水


濡れない場所から眺めれば、今日くらいのやさしい雨は落ち着きます。緑の、なんと勢いを増した鮮やかさ、伸びゆく稲の葉先に落ちる雨滴を思わせます。「ながせ」らしいお天気です。
平日の昼間、人びとの営みは一時も止むことはないのですが、もはや洗濯も買い物もあきらめて仕事の手までもしばし休めて耳をすませる心もちになり、天からしたたり落ちてきては地面に沁みる水のゆくえを思います。なよやかでいてしたたかな毛根の網がしきりと吸い上げ、葉脈のすみずみへとみなぎり、あふれ、広がり、芽を、葉を伸ばしゆく。そのかすかでいて、しっかりとしたふるえが音として聞こえてきそうです。
そうやって育まれゆくものを我々は日々、目にし、また食べものとして口にする。
雨の日の午後、目に見えないものに思いを馳せる、つながりを見る、おどろきを知る、それはとても敬虔という言葉を思わせます。 (三貴子/記)